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 「懲役20年、発達障害 求刑超す判決」について(2):アスペルガー症候群とは?

:: 2012/08/10(Fri) ::

 8月5日のブログからの続きです (まだ読んでいない方はコチラからどうぞ!)。

 前回は、「懲役20年、発達障害 求刑超す判決」について、社会的側面から自分の思ったことを綴りました。今回は、私が一番気がかりであった「アスペルガー症候群だから」という部分に焦点を当ててみたいと思います。

 この判決を読んで、「アスペルガー症候群って怖い障害なんだ」「アスペルガー症候群だから、再犯するんだ」と思ってしまう人が多いのではないかということが、私が一番危惧している点です。一体、どれくらいの人がアスペルガー症候群について理解しているのか・・多分、ほとんどの人は「アスペルガー症候群」という言葉は聞いたことがあっても、どんな障害なのかは知らないのではないかと思うのです。

 アスペルガー症候群とはどんな障害なんでしょう?

 今日は、ここに焦点を絞ってみたいと思います。(簡単な歴史を READ MORE に書いておきました。)
 長くなってしまいますが、少しでも多くの人に「アスペルガー症候群」や「自閉症」などの発達障害について知っていただけたらうれしいなと思い、なるべくわかりやすく書いたつもりです。もし疑問点や質問などありましたら、どんどんお知らせください。

 アメリカ精神医学会定めた障害の診断と手引きとして、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (略して DSM:精神障害の診断と統計の手引書) が世界中で用いられています (Wikipediaで詳細が見られます。⇒コチラ)。また、アメリカ以外の国では ICD10 国際疾病分類第10版(2003年改訂)と呼ばれる手引書を参考にすることもあります。手引書によって障害についての定義や名称も変わってきます。
 現行の DSM 第4版改訂版によれば、例えば、みなさんもよく耳にする名前のうつ病は「気分障害」、恐怖症は「不安障害」の範疇におさめられているのです。そして、アスペルガー症候群広汎性発達障害 の範疇におさめられているのです。
 この広汎性発達障害には

-自閉性障害
-レット障害
-小児期崩壊性障害
-アスペルガー障害
-特定不能の広汎性発達障害(PDDNOS)

と5つの障害がおさめられているのです。
 広汎性の発達障害というくらいですので、複数の発達障害を持ち合わせているということになります。自閉性障害=「自閉症」もこの分類に入るのですが、「自閉症」については、誰でも一度は名前だけでも耳にされたことがあるのではないでしょうか。二つとも、同じ広汎性発達障害の範疇に入っているので、似たような特性を持っているといえます。
 

 さて、自閉症は、「自閉性障害」または 
Autism Spectrum Disorders (自閉症スペクトラム障害)
 とも言われる障害の名称です。

 自閉症 (autism=オーティズム) という言葉は、ギリシャ語の「自分」を意味する autos という言葉から作りだされました。自分を意味する・・・つまり、他者との関係が薄い、ということでしょう。

 次に「スペクトラム」って何?というと (私自身、この意味が分からなかったんです) ・・・。
スペクトラムは日本語にすると連続体。
 虹をイメージしてください。虹って7色あるけれど、色と色の間はぶちぶちに切れていませんよね?色がだんだんと薄くなって次の色に徐々に変化していきますよね。これがスペクトラム (連続体)。自閉症も虹に例えると、オレンジ色が強く出ていても、オレンジ色だけでなく赤色も黄色も含まれているのです。一色だけではなく、数色の色が途切れることなく混ざり合っている・・・これが、スペクトラム (連続体) という意味だと私は理解しています 。


 さて、その「自閉症」の人が持つ特性は大きく次の3つをあわて持っているとされます。

1) 社会的な相互交流を図ることが困難
(人に興味がない、目線を合わせない、名前を呼ばれても応答しない、などなど。)
2) コミュニケーションを取ることが難しい
(物を取るときに自分で取らずに人の手をつかんでその人の手でものを取ろうとする。人が言ったことを繰り返したり、本のフレーズを暗唱していてそれを繰り返す、などなど。)
3) 行動や興味、活動が限定され、反復的=想像力がない、型通りの所作にこだわったり固執したり、繰り返し同じ行動を取る
(よく、目の前で手をぱたぱた動かす、予定変更に対してパニックになる、などなど)

 しかし、「コミュニケーションがうまく取れない」と一概に言っても、簡単な挨拶ができる人もいれば、全く人と話すこともできない人もいる。みんなが全く同じ症状を持つわけではないけれど、どこかで繋がっているので、「スペクトラム=連続体」と呼び、程度に差があるものの、この3つの特徴がすべて見られる障害が「自閉症スペクトラム障害」となります。

 どうしたらわかりやすく説明できるか考えたのが、下の図。

spectrum2.jpg


 赤色:社会的な相互交流を図ること
 青色:コミュニケーションを取ること

色が濃いほど、その程度が重度であることを示します。

そして、これにもう一つの
 黄色:行動や興味、活動が限定され、反復的=想像力がない、型通りの所作にこだわったり固執したり、繰り返し同じ行動を取る 

をかぶせます。

spectrum3.jpg

すると、
- a の人は 3つの特性全てにおいて重度
- b の人は 3つの特性全てにおいて軽度
- c の人は コミュニケーションを取ることの困難さが突出している。
- d の人は 社会的相互交流を図ることの困難さが突出して難しい。
- e の人は 3つの特性が全て突出もしていないけれど、軽度でもない。

 色のグラデーションを見てもらうと、常に色が移り変わっているのがわかると思います。虹のようでしょ?困難な程度は違うけれど全ての特性を持ち合わせているのです。
 実際、私も今までにたくさんの自閉症を持つ子どもと接してきました。「自閉症」と言われる子どもたちは、確かに似たような特性を持っているのですが、みな、それぞれ違っているんです。

 さて、今回の裁判で20年の判決理由となった「アスペルガー症候群」の特徴としては、自閉症のそれとよく似ていますが、自閉症の主な特性のひとつのコミュニケーションを取ることには大きな困難を示さないとされ

① 言語や知的な遅れはない
② 人との相互作用に関する問題がある
③ 興味や行動が特異

と言われています。

 もう少し詳しく見てみますね。

① 言語や知的な遅れはない

 遅れはないということなのですが、遅れどころがかなり進んでいる、または驚くような雄弁さを持ち合わせているアスペルガー症候群のある人もいます。ただ、あまりにも「専門家」のような口ぶりなのです。
 だから、一見すると「この子は頭がいい」と思われ、問題がないようにみなされてしまうのです。じゃ、実際、どんな問題が生じるのでしょう?それが「② 人との相互作用に関する問題」となります。

② 人との相互作用に関する問題がある

 口ぶりが達者と言われるほど、アスペルガー症候群を持つ人は雄弁でもあるのです。しかし、言葉を文字通りにしか解釈できない人が多いのです。

 例えば、これは実際にあった話。
ある人 (Aさん) がアスペルガー症候群のある Bさんとレストランへ行った時のこと。バイキング形式なので、一人は席で待っていて、一人は料理を取りに行くことにしました。
最初に、AさんがBさんに
「カバンを見ていてね」
と頼んで、バイキングに。
お皿に料理を盛って戻ってきたら、カバンがなくなっているではないですか!
「私のカバンは?」
と聞くと、
「男の人が持って行った」と。
当然、Aさんは
「どうして見ていてくれなかったの?」
と怒って言うと、Bさんは
「私、カバン、見ていたよ。」
-------------------------------

 わかりますか?Bさんは文字通り「見ていた」のです。私たちが普通「カバンを見ていてね」と言えば、それは「取られないように注意していて」という意味を含んでいますが、アスペルガー症候群のある人はそういった言葉に含まれている意味を読みとることが難しいと言われています。
 ですので、皮肉なども全く通じなかったりもします。そうなると、「おかしい人」「変わっている人」とどうしても周囲からは見られてしまいますよね。「空気読めない人」と言う言葉がはやりましたが、まさにそうなんです、場の空気が読めないのです。
  コミュニケーションに大きな困難がないと言われていますが、これ、実際には問題になる場合が多いですよね。

 また、話し方にも特徴があり、一本調子で話したり、不自然な間があったりすることもあります。でも、アスペルガー症候群のある子どもたちは、自分の言葉がどれだけ他の人と違っているかは気がつかないのです。

③ 興味や行動が特異 

 ①にも関連していますが、専門家のような口ぶりだけでなく、中には専門家のような知識も持ち合わせている人もいます。コンピュータ、恐竜、天文学、電車などが好きな人が多いようです。
 例えば、コンピュータの知識が豊富で、瞬時に「このメーカーのこのタイプは、・・・・」とすらすらと口に出てくるのですが、「じゃ、私はインターネットとメールと少しだけ資料を作るのにパソコンが欲しいんだけど、どれがいい?」と聞くと、答えられない。あたふたしながら「XXのものがいいよ」と言ってくれるのですが、その理由はと言うと「パソコン本体の色がいい」と、全く見当違いな答えを返してきます。つまり、専門知識は持ち合わせていても、目的がわからなかったり、全体像をとらえたりする事が難しいのです。


 こうした特性を持っているのですが、集中力や記憶力、またある事柄にずっと夢中になっていられるという長所もあるのです。こうした特徴を生かすことができれば、驚くような成果を上げる人もたくさんいます。

 私は、自閉症やアスペルガー症候群の特性というのは、誰にでも少しは合わせ持っているものだと思うのです。私自身、靴下は必ず右から履かないと気分が悪いという変なこだわりがありますし、知り合いに目を合わせて話ができない人もいます。天気予報を必ずチェックしないと不安だと言う人もいます。毎日、決まった道を通らないと何となく不安を感じる人もいるはず。
 ただ、自閉症やアスペルガー症候群を持っている人と違う点は、複数の特性を持ち合わせていなかったり、この変わったこだわりを人に堂々と言ったりしない、というところだと思うのです。

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 さて、私がこのブログで取り上げている裁判での大東被告は、この「アスペルガー症候群」であると診断されているわけですが、みなさん、私の説明を読まれて、どう思いますか?アスペルガー症候群だから犯罪を犯したと思いますか?アスペルガー症候群だから再犯のおそれがあると思いますか?

 今回の説明に最後までお付き合いくださり、ありがとうございます。なんとなくでも「自閉症」や「アスペルガー症候群」についてわかっていただけたらうれしいです。長くなってしまったので、判決に関して思うことはまた次回。

*参考文献
S. オゾノフ、J・ドーソン、J・マックパートランド著 田中康雄、佐藤美奈子訳 「みんなで学ぶアスペルガー症候群と高機能自閉症」星和書店 (2004)
Lorna Wing 著「The Autistic Spectrum」Robinson (1996)
高橋智 編集代表 「インクルージョン時代の障害理解と生涯発達支援」 日本文化科学社 (2007)


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